AIを介することで2D画像や動画を3D化する。そういったツールが昨今は増えています。以前紹介した『iw3』や『AutoDepth Image Viewer』もそのうちの1つです。
そして今回紹介するのが『Owl3D』という3D化ツール。こちらは無料で利用できるものの、サブスクまたは買い切りプランが用意されていて完全無料の『iw3』とはライバル的関係にあります。
『AutoDepth Image Viewer』は立体化の方法・見え方がこの2つとは異なるため差別化ができるものの『iw3』とはバチバチにぶつかりそう。
ということで今回は管理人が『Owl3D』のProプランに加入して実際に使ってみました。『Owl3D』の使い方、プランの比較、『iw3』と大きな違いがあるのかなどを解説していきます。
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Owl3Dのプラン詳細
『Owl3D』は基本無料です。例えば『AutoDepth Image Viewer』の無料体験版は3D化の枚数に制限がありましたが『Owl3D』は枚数制限がなく永遠に利用が可能となっています。なので人によっては無料のままでずっと楽しめるということ。
ただし有料プランにすることでさらに機能がアンロックされるので自分に合ったプランを選びましょう。
各プランの料金とできること
プラン | 料金 | 特徴 |
---|---|---|
Starter | free (0円) |
360度写真&ビデオから3D 1080p HDの出力解像度 高詳細レンダリング VR180からRGBDへの変換 統合3Dサブタイトル焼き付け |
AIを活用した無制限の2Dから3Dへの変換
Owl3D Plus | 月契約:$10/月 年契約:$6.99/月 購入:$179 |
Starterに含まれるすべての機能に加えて… 無制限のビデオ再生時間 バッチ処理機能 最大4Kの解像度 高解像度深度融合 3D高速再エクスポート |
Owl3D Pro | 月契約:$36/月 年契約:$25/月 |
Owl3D Plusに含まれるすべての機能に加えて… 商用利用ライセンス付き 最大8Kの解像度 PNG、EXR、TIFFでシーケンス出力対応 ProResサポート |
無料と有料の大きな違い
- 生成する画像/動画の最大解像度:無料では780pまで。有料ならプランによって4Kまたは8Kまで生成可能。
- Depth method:深度生成の方法が無料ならstandardのみ。有料ならHigh-Res Fusionを選択できる。
基本機能的なものは無料版で十分といえば十分な機能が揃っています。では有料版との大きな違いは何か?と言われればとりあえずこの2つを挙げてみます。
深度のクオリティと解像度の高さは生成する3Dコンテンツの質に直結します。なので質の高い3D化を求めるなら有料を選ぶ方がいいでしょう。
Plus版とPro版の違い
- 買い切りがある:Plus版は買い切りが可能。Proは月額サブスクのみ。買い切りは1年間のアップデート権利がある
- 高解像度出力が可能:Pro版なら生成画像の解像度を8Kまで上げられる。Plus版では4Kが上限。
- 商用利用が可能:Pro版ならお金儲けの利用が許されるライセンスを入手可能。
- 特定の拡張子でシーケンス出力が可能:Pro版なら動画を一連の静止画として出力できる。PNG, EXR, TIFFなので高品質な状態で可能。
- ProResサポート:Pro版の特別なサポートを受けられる。
個人の趣味で利用する分には「Owl3D Plus」のプランで問題ない可能性がかなり高いです。本当に商業級の利用をするならPro版にする必要がありますが、個人ならPlus版で十分です。
Owl3Dの導入方法
Owl3Dの導入方法を画像付きで紹介します。
対応デバイス
- Windows(グラボ搭載)
- Mac(M1以上のAppleシリコン搭載)
ダウンロード/インストールする
※MacならFor Macに、WindowsならFor Windowsに自動で切り替わります
Owl3Dのダウンロード・インストールをする前に10GBの空きストレージを最低でも確保しておくべきとのこと。後ほどAIモデルのダウンロードが必要に。
有料プランを契約する(必要な人のみ)
有料版を使用したい人はアプリ左上にある「Upgrade」をクリック。するとプランと料金が表示されます。
多くの人にとっては真ん中の「Owl3D Plusプラン」を選べば満足できるはず。買い切りプランを選ぶ時は「Owl3D Plus」の右にある「⇄」アイコンをクリックしましょう。
「Choose Plus」または「Choose Pro」をクリックすると月契約または年契約の選択に移行します。
1ヶ月あたりの支払いは年契約のほうが安いの。これはサブスクなので当然。ただ1年間も使うかと言われると…と思ってる人も多いと思います。そういう人は普通に月契約でお試ししてみるのが無難ですね。無料でフル機能使える「iw3」という選択肢もあるわけですし。
支払い方法はクレジットカードまたはPaypalの2通り。管理人はApple Pay(クレカ)で支払いしました。
プランの支払いを完了した時点でアカウントを作っていない場合、アカウントの作成(無料)を求められます。
好きな名前とパスワードとメールアドレスを記入して【Create Account】をクリックしましょう。ちなみにユーザー名にはいくつか条件があります。
管理人は2回もエラーで弾かれてしまいました。条件は要するに「小文字の英数字、ピリオド(.)、アンダースコア(_)で構成すること」です。大文字や空白は使わないでください。
メールが記入したアドレスに送られてくるので、そちらの番号をコピーして貼り付け。【Confirm】をクリックすればアカウント登録完了。同時に有料プランへの切り替わりもしてくれます。
Owl3D使い方(ここが重要)
- 3D化したい画像/動画を選択する
- 出力3Dフォーマットを選択する
- 生成するコンテンツの出力場所(=保存場所)を選択する
- 詳細設定を調整する
- 変換を開始する
- 3D対応デバイスで楽しむ
簡単に流れを説明すると上記の通り。実際は細かい設定をしなければいけないので、それぞれ項目ごとに画像付きで説明していきます。
3D化したい画像/動画を選択する
2D画像/動画の3D変換を開始するには、中央エリアまたは右上隅の変換ボタン(Convert)をクリックします。3Dに変換したいメディアを選んでください。
するとこんな画面が表示されるので、ここから生成するフォーマットや解像度などを設定していきます。
※こちらのスクショは画像を選択した場合。動画を選択した場合は設定項目が増える。
出力3Dフォーマットを選択する
「3D formats」から選択しましょう。Owl3Dは各デバイス向けに多様な3Dフォーマットをサポートしています。
フォーマット | 説明 |
---|---|
サイドバイサイド(SBS) | Meta QuestなどのほとんどのVRヘッドセットに対応。多くのユーザーはこれを選べばOK。 |
空間ビデオ/写真 | Apple Vision Pro用。つまりOwl3DはVisionProに対応しているということ。(小泉構文) |
RGB-D | Looking Glassなどのホログラフィックディスプレイ用。 |
トップボトム(TB) | 縦に積み重ねられている。SBSと対をなす存在だがやや劣勢。SBSの方が標準サポートされていることが多く、解像度の効率や視聴のしやすさからSBSが有利とされている。 |
ハーフサイドバイサイド | 左右の画像が水平方向に半分になり、元のアスペクト比を維持できる。容量が小さくなり、画質が少し落ちる。帯域幅や処理能力が制限される場合に使用。 |
ハーフトップボトム | 上下の画像が垂直方向に半分になり、元のアスペクト比を維持できる。容量が小さくなるが、画質も少し落ちる。帯域幅や処理能力が制限される場合に使用。 |
Cross-Eye(交差法) | SBSと似ている形式だが、左右を入れ替える。裸眼で3D効果を体験できる。 |
Split-L-R | 左右の目の画像を別々に出力。左右で独立しているので後から編集や調整がしやすい。どちらかといえばプロ向け。 |
Anaglyph | 古典的な赤青メガネで視聴するためのもの。フルカラーとならないのでおすすめはしない。雑誌のおまけでよく見かけたやつ。 |
Depth-Only | 深度マップのみを出力する。 |
生成するコンテンツの出力場所(=保存場所)を選択する
「Output Location」から選択しましょう。変換した3Dメディアを保存する場所を指定できます。
深度マップの最大解像度とインプットフォーマット
▲無料なら720Pが最大。
▲Plusなら4K。Proなら8Kまで対応。有料版だとResolutionの項目がDepthのところに移動する。
インプットフォーマットは自分が選択した画像フォーマットがレギュラー(普通のやつ)なのか、それとも360°コンテンツなのかで判断しましょう。基本はRegularでOK。
画像版:詳細設定を調整する(Render Settings)
[Render Settings]をクリックするとさらなる詳細設定が展開されて出てきます。こちらも3Dの質を決める重要な項目なので見ていきましょう。
3D render
Output render
「Right-eye」「Left-eye」「Dual Eye」の中から3D変位のレンダリング方法を選択します。処理時間の関係からシングルアイ(片目)のどちらかを選択するのが推奨設定。ただしより強い3Dを求めるならデュアルアイ(両目)を選びます。またデュアルアイにはアーティファクト(不自然な表示のこと)を減少させる効果もあります。処理時間とのトレードオフ。どちらを優先するかで決める項目。
Image 3D effect
- Strength:3Dの深さ効果を調整する項目。強さを上げると当然3D効果が強くなるが、アーティファクト(不自然な部分)が増えたり目が疲れるデメリットもある。
- Pop-out:視聴者により近い物体の3D強度を強める設定。誇張された表現になる。デフォルトはOFF。
- Convergence:輻輳面の設定。0~1まで設定できる。具体的な効果を言うと、背景0/前景1を基準として、物体が「画面上に見える」・「画面の手前に見える」・「画面の奥に見える」といった立体的な見え方の調整をする項目。
Depth
Depth method
「Standard」または「High-Res-Fusion」から選択可能。有料プランのみ「High-Res-Fusion」を選択できます。
AI model
- Balanced V2:バランスタイプの新モデル。3Dのクオリティと描き出しスピードのバランスがいい。(High-Res-Fusionを選ぶとV2は選べないっぽい)
- Balanced:バランスタイプの旧モデル。
- Precision:クオリティが高くなるモデル。その分だけ描き出しに時間がかかる。
動画版:詳細設定を調整する(Render Settings)
動画を3Dにする場合は当然ですが画像の時と比べて設定する項目が変化します。画像の時と異なる項目についてのみ解説しているので、先に画像版の詳細設定を頭に入れておくといいでしょう。
Export
format
Videoで生成するか、シーケンス(連番画像のこと。パラパラ漫画的な。)として生成するかを選べる。シーケンスを選べるのはPro版のみ。
Resolution
1080pまたは上限4K/8Kまで選べる。1080pより上を選べるかはうpする動画の解像度に依存する。ちなみにXRデバイス的には1080pが効率的に最適とのこと。
Codec
「H264」または「H265」を選択可能。フルHDまでならH264でもOK。4K以上なら圧縮効率のいいH265を選ぶべき。ただしH265は対応していないプレイヤーがあったりそれなりのグラボが必要です。
Encoding
「Balanced」と「High Visual Quality」を選択可能。基本的には「Balanced」が品質とファイルサイズのバランスが取れています。「High Visual Quality」は品質が上がるもののファイルサイズが大きくなります。
GPU encoding
「Enabled」にすると、高速エンコーディングにGPUを使用するようになります。この設定は特にH265で効果を発揮するとのこと。またファイルサイズが大きくなる可能性もあるとのことです。
Fast re-export 3D
深度マップを保存するかどうかの設定。「Enabled」に設定しておくと、後で設定を変えて素早く3D動画を再生成することが可能になります。
「Enabled(16bit)」はより高品質な深度情報を保存できますが、通常設定の4倍の容量を消費します。
Depth
Temporal smoothing
3Dの時間的一貫性を改善する項目。フレームごとの3Dのズレ=ちらつきを軽減することができます。「Off」「Low」「Midium」「High」を選べますが、強めるほど生成に時間がかかるようになります。
Black bar detection
「Enabled」にすると動画の縁周りの黒い帯部分(=レターボックス/ピラーボックス)を検出し、そこを除外して3Dの練度を上げることができます。
変換を開始する
メディアと設定を選んだら、スタートボタンをクリックします。Owl3DのAIが自動的に2D画像/動画を3Dに変換します。
3D対応デバイスで楽しむ
←おすすめ
Apple Vision Pro
Looking Glass(メガネ不要のホログラフィックディスプレイ)
Lume Pad/nubia Pad 3D(メガネ不要の3Dタブレット)
これらの3Dに対応したデバイスを使って生成したコンテンツを嗜みましょう。なお、Meta Questの場合は具体的に以下のプレイヤーを使って再生することができます。
- DeoVR(無料プレイヤー)
- PigasusVR(有料プレイヤー)
- SKYBOX(有料プレイヤー)←個人的おすすめ
アスペクト比が合っていない状態でこの「フルSBSマッチング」をONにすると綺麗になります。これだけなので楽チン。画像検索のしやすさもあって3D見るならSKYBOX推し。
その他設定について
左下の歯車マークをクリックすると以下の項目を設定できます。
項目 | 説明 |
---|---|
System Monitor | CPU・GPU・DSKのシステムパフォーマンスを監視できる。 |
High Performance Mode | CPUとGPUの使用率を最大限に引き上げる。 |
Data & Strage | 処理中の中間成果物の保存場所。最低30GBの空き容量が推奨されている。 |
Clear Cache | キャッシュされた生成物を削除する。キャッシュ削除後は既存の変換を再エクスポートできなくなる。 |
GPU Selection(Beta) | どのGPUを稼働させるかを選べる。(Windows版のみ) |
Auto Update | アプデ更新を自動的にダウンロード・インストールする。(推奨) |
Owl3Dとiw3の比較
完全無料で使えるiw3、そしてOwl3Dの無料版および有料版を使ってみた結果どちらが優れているかをまとめてみました。
UIのわかりやすさ
Owl3D | iw3 |
個人的にいちばん大きな差を感じたのがUI部分。
パッと見で「情報が頭に入りやすいのはどっちか?」「項目の説明がはたされているのはどっちか?」という問いに答えるならOwl3Dの方が綺麗でわかりやすく洗練されていると感じます。
という人はiw3の方が良いかもしれませんが、それぞれの項目を理解していればOwl3Dの方が使いやすい・わかりやすいと感じました。スライダーによる調整も可能でより直感的に調整できるのが要素として大きいかもしれません。
Iw3の方は無機質かつ詳しい説明がアプリ内にないので製作者の説明を確認しないといけません。無料で使えるものなので全然気にしないといえばそうですが、あえて比べるならそこが気になるかなと。
出来上がるコンテンツの質
Owl3D | iw3 |
例えばこちらの画像で比較。実際の目で見ると、iw3の方はやや潰れたデブ気味になっています。Owl3Dは凛ちゃんのスタイルが潰れずにシュッとしたまま。要はOwl3Dは最適化しやすいということ。
出来上がる3Dコンテンツのクオリティに関しての結論はこう。
iw3と有料版Owl3Dなら最適化しやすいOwl3Dの方が画質良しバランス良しでイイ方向に行きやすい。iw3は設定をしっかり吟味する必要あり。
iw3の方が深度推定モデルが多く用意されているというメリットがありますが、最適な深度モデルを選ぶ必要があったり、結局特定の深度モデルしか選ばなかったり。
それならわかりやすいOwl3Dの方が扱いやすいと言えますね。もちろん無料同士で比べるならiw3の方が根本的に画質が良いです。有料プランに登録することでOwl3Dは力を発揮します。
サイズ感を調整するならiw3
3D生成物をVRプレイヤーで再生するときに、それをアップにして近づけると大きく表示されます。アップ時に人物が大きすぎるのが嫌ならiw3で調整することが可能。「自分の大きさ」項目をいじればOK。
一方でOwl3Dにはその機能がないっぽい。探したけど見つからなかったので、コンパクトに生成したい場合はiw3の方に軍配が上がります。
Macで利用する/Apple Vision Proで利用する
もう1点iw3とOwl3Dで大きな違いを指摘すると、Owl3DはMacで使えるということ。M1以上のチップを搭載していれば対応。
RTX3090とM1Pro(管理人のやつはコア数上げてます)で比較した時、やはり処理が速いのはRTX3090積んだPCです。というか安定性が段違い。
Mac版Owl3Dは細かい機能がいくつか未対応なので、どーせ使うならWindows版がおすすめですが、Macしか持っていない人でも使えるというのは1つの利点でしょう。
そしてフォーマットにApple Vision Pro対応の空間ビデオ/写真を選ぶことも可能。
どっちを選ぶべき?
無料ならiw3を選んだ方が制限なくクオリティの高い3Dコンテンツを生成できます。
有料プランに登録するならOwl3Dも魅力的な選択肢になります。直感的に扱いやすいOwl3Dがiw3と遜色ない3Dコンテンツ(もしくはそれ以上の3Dコンテンツ)を生成できるなら、お金を支払う価値はあります。
UI・UXにお金を出せるならOwl3Dを、無料で頑張るならiw3を選択すると良いでしょう。どちらも良いところがあるので一概にこっちが悪だと言えないです。むしろどっちも良いと思ったのが今回の結論。
ただしMacやApple Vision Proに対応しているのは記事執筆時点でOwl3Dの方です。
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まとめ
「Owl3D」は無料でもそれなりに使える有料コンテンツです。ただし無料で3D化を楽しみたいなら「iw3」で十分に思えます。
一方で有料版は3Dのクオリティを上げる機能がアンロックされることもあり、わかりやすいUI・使いやすさという観点からお金を払う価値があるツールになっています。
「Auto Depth Image Viewer」は立体の表現方法が異なるため差別化されていますが、「iw3」と「Owl3D」は似たツールです。
直感的な扱いやすさを求めるなら「Owl3D」をおすすめします。
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